GARAGE LABO 第1回キャリアフォーラム ”デザイナーのキャリアについて考える”

Pocket

01

今回は、GARAGE LABO 第1回キャリアフォーラム ”デザイナーのキャリアについて考える”というタイトルでデザイナーのキャリアについての公開インタビューを実施しました。

GARAGE LABOインタビュー

プロフィール

清水 舞子氏(シミズマイコ)氏
・多摩美術大学中退。その後、明治大学商学部編入学
・フリーランスのwebデザイナーとして2年間活動
・2014年5月 祭.inc 創業
・現在、デザインの他に化粧品のzozotownやクリエイター向けキャリアコンサルを営んでいます
・参考リンク:絵の具も買えない程貧乏だった私が多摩美を中退しビジネスを志し明治大学に合格。しかし納金直前に70万を失う危機にみまわれるも歌舞伎町で1番になり無事入学できたお話[ちょこちょこ更新]

渡辺 友馬氏(ワタナベユウマ)氏
・米国ジョージア州 Savannah College of Art and Design (SCAD) Broadcast Design Major卒業、BFA修得
・大学卒業後、株式会社レアジョブにて様々なサービスのブランディング企画やデザインを担当
・2014年6月より株式会社ジオコードにてWEBデザイナーとして勤務。 デザイン面からスタートアップの支援も行っている

野村 岳史氏(ノムラタカシ)(司会)
・ 2014年、一橋大学社会学部卒業株式会社Desirepath 代表取締役 CEO
・GARAGE LABO代表

インタビュー

—本日は、デザイナーのキャリアについてお話をお伺い出来ればと思います。まずは自己紹介をお願いします。

渡辺: 経歴を簡単にお話します。高校時代に1年間アメリカへ留学し、その後またアメリカに大学4年間留学してデザインとアートを勉強しました。

卒業後、この前上場したベンチャー企業のレアジョブに就職し、デザインがビジネスにどう関わってくるか、ということを学びました。その辺りが分かってきたところで、もっとデザインを学ばなければということで制作会社のジオコードに転職しました。

清水: 多摩美術大学で現代美術をやっていました。2,3年後、思うところがあり中退しまして、歌舞伎町に引っ越し、明治大学商学部でビジネスを学びました。

その後、色々な問題を解決するにはITがいいかなと思いWEBデザイナーとして活動を始めて、最近になって会社を立ち上げました。

—まず、海外でなぜデザインを勉強されたのか、お聞かせください。

渡辺: 中学のときから海外を目指していました。単純に世界の同世代が何をしているのか気になっていたから。1年間高校の時にオレゴン州でホームステイをし、帰ってきた時に大学をどうしようか考え、アメリカの大学に行きたいと思いました。

理由としては、アメリカの学生の平均勉強時間は約6時間。日本ではそこまでしていないだろうから、勉強を頑張れる環境に入りたかったです。

実は、アメリカの大学に入るのは超簡単です。TOEFLの点数がある程度とれることと、収入の証明、それが通れば簡単に入学できます。

当時、デザインを勉強することは考えておらず、学部をどうしようか迷っていました。

ビジネスマンとして生きていくことを考えた時に、バイトでの経験から営業は向いていないなと思っていました。路上でモデムを配るバイトをやっていたのですが、10分毎に電話がかかったりしてきて胃が痛くもなったりもしました(苦笑)こういう道は無理だと思った。

ふとした時、友達に「絵をかくのが好きなんだから、デザインとか美術系の大学に行けば?」と言われ、デザインの大学を探した時に見つけたのがSCAD。私立の大学で、学費だけで年間200万~300万かかるとのこと。

これは大変だ、奨学金とらなきゃと思っていたところ、周りの方の支援があり、上手いこと特待生をとることができました。ご縁があり、その大学に行くことになりました。

その大学では、最初の2年間はジェネラルスタディで延々とスケッチをとるなどして、デザインの基礎を学びます。3年になってから、モーションデザイン・イラストデザイン・ファッションデザイン・ジュエリーデザインなどなど、専門的なことを学べるような形になっています。

—試験がTOEFLだけだと、入学時にスキルの差は出てきたりしませんか?

渡辺: たしかにあった。最初からPhotoshopが使えたり。でも、授業で慣れていったり、自分で勉強してキャッチアップ可能でした。

—一方で、日本の美大はデザイン的スキルが要求されるかと思いますが、いかがでしょうか?

清水:そうですね。日本の美大は逆に入るのがすごく大変です。みんな予備校に通ってデッサンを勉強したりします。4浪する人もいました。

でも、私はあんまり受験勉強しませんでした(笑)

高3の夏休みまで部活をしていて何もしていませんでした。絵が得意で自信があったので。模試が夏休みは最下位でしたが、直前には1位になり、無事に多摩美にも入りました。

— でも、結局中退されたんですよね?どういうことなんですか?笑

清水:美大に入るときは絵が好きだから入ろう、という程度の考えでした。いざ入ってみると、良い物をつくっていくためにはお金が必要だと言うことに気付いたんです。

私は母子家庭出身なので、お金にすごくシビアでした。周りには恵まれた環境の人が多くギャップを感じた。年200万、家を担保にしてまで授業料を払うくらいだったら辞めよう、と思いました。

渡辺: なんで美大生はお金持ちが多いんですかね(笑)

そういう土台があるんですかね。僕も友達からドバイ旅行のお土産として木彫りの象の置物を貰ったんですけど、よく見るとその象の象牙が本物でした(笑) 更に、その友達のお母さんはUAEでクルーザーを買ってたそうです(笑)寂しくなりました。。。

—お土産の世界観が変わりますね(笑) 清水さんはその後、明治大学に行かれたとのことですが。

清水:ビジネスのことを勉強しようと思い明治大学商学部に入りました。その後、休学しました。明治大学も楽しかったのですが、学校は意味ないなと、行ってから気づきました(笑)ビジネスしないと意味ないな、と。

—僕も大学は卒業しているのですが、机上の空論というか結局社会に出ないうちに理論を学ぶので、地に足がつかないというか、実感がわかないという気がしています。その辺りはアメリカの場合はどうでしたか?

渡辺: アメリカではインターンがありました。大学に入ってどこかに勤めたかったら、長期休みを利用してインターンをします。1年の3分の1は休みになっているので。留学生は、そこで気に入られればそのまま就職します。

—アメリカではLinkedInを使ってインターンを探すと聞いたのですが、実際はどうですか?

渡辺: 僕の時は、LinkedInが出たばかりの時でした。結局使いませんでしたが。実は、僕はインターンをとれませんでした。その頃はアメリカの証券会社が引き起こした不景気で、相当レベルか成績が良くないと無理でした。僕の友人の日本人で、アメリカで働いている人は全員オールAです。

清水:大学の成績がモロに関係してくるんですね。

—実務であるインターンと大学の成績に関係があるのは、アメリカならではなのかなと思いました。

渡辺: インターンとれないやつはどうするかというと、フリーランスをやることになります。

僕の場合、大学4年夏にこれはヤバイと思いました。どこに出しても書類から落ちる。日本に帰ってこようと思いました。実績をつくるしかないと考え、夏休みの3か月で10数件の仕事をこなし、そこからは書類が通るようになりました。現金だよね(笑)

—そうした案件の獲得はどうやってやられたのですか?

渡辺: その当時はランサーズが出始めだったので、3~4件はランサーズで、あとは地元の人のツテで獲得しました。

—清水さんも、クラウドソーシングなどを利用してお仕事を?

清水:そうですね。コネも何もなかったので、ランサーズとクラウドワークスに登録し上から下まで出し、実績を徐々に作って仕事をとる、という形でした。

—結構とれるものなんですか?

清水:最初は何もできなかったので、本当に全然とれませんでしたね。

渡辺: 僕は、20件出して3件通るかどうか。

—日本だと、就職の前提としてインターンをやりますけど。

渡辺: なんか日本のインターンって3日間とか研修みたいなやつあるじゃないですか。あれは不思議ですね。

清水:たしかに。見学会というか。

渡辺: 僕は、インターンは長期だと思っている。その会社が自分に合うかどうか、どんなビジネスをやっているか、1日で分かるわけない。1ヶ月は最低でもやった方がいいかなと思う。

清水:ちなみに、インターンは有給なんですか?

渡辺: 出るところは4000円、出ないないところはゼロ。1ヶ月ゼロでニューヨークに住め、とか言われるのでキツイです(笑) 世界的な有名企業は出してもらえますが。。。

— その後、レアジョブに行かれたと。レアジョブってオンライン英会話の会社ですよね?どういうきっかけがあって入社されたんですか?

渡辺: ぶっちゃけた話をしますと(笑)、その当時、絶対に制作会社に行きたくなかったんですよ。制作会社を悪く言うわけではないですが、単純に1個つくって終わり、自分が当事者意識を持たずにデザインを続けていくのを今はやりたくないなと思った。

まず、会社に入ってブランディングデザインとして、いちからきっちりデザインをつくっていきたいという気持ちがありました。その当時から自分で会社を興したいと思っていたのですが、何をすれば良いかわからない。それを知るには小さいところ、ベンチャー企業に入るのが早いと思いました。

その会社がどういう道筋を描いていくのかが見えるのが、唯一の僕にとってのバックかなと。僕はデザインで力をつけながら、デザインでそれに返していければなと考えていました。

— なるほど。これからブランドイメージをつくっていく、なおかつスタートアップがどういった形で成長していくのか、というのを見れる所に入ったのですね。

渡辺: そうですね。その選択で、レアジョブはアリだったなと思います(笑)

—無事上場しました(笑)

清水:先見の明が(笑)

渡辺: 上場するまでに波があった会社だったので、色んなところが見れて良かったです。

—今は、制作会社に?

渡辺: 逆に制作会社に入りました。ビジネスの近いところでやってくと、社内での精査をして、それからデザイナーとのやりとり、となるのでどうしても案件数が減ってきます。

僕は、ビジネスと近いところで一緒にデザインをつくりあげていくのは楽しかったのですが、それを30歳までやったときにデザイナーとして腕が確立できるかというとできないなと思った。もっと案件数をこなしていかないと思い、渋谷界隈で一番激しそうなところを選びました(笑)

5~6年で300社500サイトをやるところなので、それ位のスピード感なら色々経験できると思い転職しました。

—一方、清水さんは就職せず独自のフリーな路線で進まれています。結構フリーって大変かと思うんですけど、一番苦労したの点は?

清水:人に紹介してもらうフローを確立するまでは大変でした。デザイナー界隈は狭いので、良い仕事ができれば割と次の仕事を紹介してもらえたりします。そこにいくまで、業界の中で信頼を築くまでは大変でした。いまでもまだまだですが!

—会社でやると色んな作業を分担しながらやれますが、全部自分一人でやるとなると誰かの力を借りるシーンは出たりしませんでしたか?

清水:まあ何とかなってました。逆に、上流から下流まで見れてよかった。

—なるほど。今は起業。起業って、いろんな意味があるかと思います。清水さんは、フリーランスの立場からベンチャーを始めるということで、そこにどんな思いがあったのですか?

清水:自分のコンテンツがお金になる仕組みがあればいいなと思っていた。今もデザイナー兼社長ですが、もともとウェブサービスをつくりたいがために、デザイナーになりました。その修業期間としてフリーランスをしていました。

渡辺: 時期的には、どれくらいから構想していたんですか?

清水:フリーランスで月30万を稼いで食べていけるようになったら、次の段階に行こうと考えていました。それが1年ぐらいありました。今は化粧ビジネスをやっているのですが、その前は音楽サービスを潰しています。

—なるほど。紆余曲折あるんですね。今度起業された会社ではどんなビジネスを?

清水:女の子が自撮り・セルフィーをして、その写真から買い物をできるというサービスです。化粧をした女の子の写真と商品がひもづけられて、見ている人がECで買える、という感じです。7月末にプロトタイプ、9月頭にリリース予定です。

—渡辺さんも、スタートアップのご支援をされていると伺いましたが。

渡辺: そうですね。今の会社に入る前はですけど、金額うんぬんにかかわらず、面白いサービスがあって共感ができれば、ガンガン支援していました。デザインをつくるのもそうですし、ディスカッションをしたり。前職でウェブサービスをやっていたので、そういうご縁がありまして。

—お話を伺っていると、お二人ともデザイナーなんですけれどもビジネス的観点も持ち合わせているなと思いました。ビジネスのことをわかっているとサービスの成長が変わるなど、そういった違いは出てきたりするんですか?

渡辺: 僕はあると思いますね。アウトプットが変わります。基本的に、自分が好きなデザインやカッコいいデザインとかなくなってきます。

例えば、僕がカッコイイと思うデザインは売れるデザインではなくて、アメリカ留学をした今年27歳の男性で制作会社に勤めているデザイナーが好きなデザイン、なわけです。別にエンドユーザーと何の関係もないですよね。

そんなデザインを作っても絶対にビジネスとして発展するわけないので、まずエンドユーザーを見て、そのエンドユーザーに対して響く響かないではなく、その生活に入っていけるようなデザインをつくっていく、というのが圧倒的な差になります。

清水:おっしゃるとおりだと思います。よくクライアントさんに色を付けることがデザインと言われたりします。たしかにそれもデザインの一つではありますが、届けたい人に目的を届けるためにどうやりますか、というのがデザインだと思います。やっぱり、デザイナーもビジネス要素を把握していないといけないと思います。

渡辺: そうですね。ビジネス要素を把握していないデザインは、基本的にチグハグになりがちです。そこは、これからデザインをやっていきたいという人に必ず押さえて欲しいですね。

—では、そろそろ締めの方に入りたいと思います。清水さんはスタートアップをされて、サービスを広めていくと。渡辺さんはこれからどういう形になるのでしょうか?

渡辺: 今後2年間はウェブデザイナーとして、がっつりデザインとコーディングをやっていきたいと思っています。

コーディングも得意な方になってきたので、今後はそちらの分野にも経験を広げていきつつ、目標として100サイト位はデザインしたいと思っています。まずは2年間そういう形でやって、その後はディレクターになるのか、技術寄りになるのか、決めていこうと思います。

—今後、デザイナーさんの方や学生さんへアドバイス等あれば教えてください。

渡辺: デザインをやるんだったら、まずデザインとはなんぞやというのを考えるのが大事だと思います。

僕の考えだと、デザインはあくまでもコミュニケーションの1つであり、問題解決の手段の1つ。ビジネスをやる上で、他に解決する方法があれば、それはデザインでなくても良い。デザインは道具の1つに過ぎないということを認識してほしいと思います。

だから、今後ビジネスマンとして社会人として、世の中で勝負していきたいのなら、デザイン以外にも興味を持って知識や技術をつけていくのが良いかなと思います。デザインだけ出来るひとはいくらでもいるし、上には上がいくらでもいる。デザインプラス何かがあると生き残りやすいかなと思います。

僕の場合は、コーディングやビジネス系の視点です。

—海外でのご経験というのは?

渡辺: 英語ですか?僕は、既に普通に使える人間なので、そこは特別だという思いはないです。どこでも仕事しようと思えばできるよね、というだけ。僕の中では、1個の強みというより、単純に持っている道具の一つ。

—強力ですね(笑)

渡辺: たしかに、そう言われてみれば(笑)  そして、なんでこうなってるんだろうと思ったら、調べるのが一番良いと思います。

例えば、ウェブマーケティングってどこからどここまでやるの、とか、リアルマーケティングとどうつなげていくのか、とか。

その辺を全部知っていくと、自分の持っているデザインがどこで活きてくるか分かってくる。だから、知ること、デザイン以外の分野に興味を持つことがすごく大事。自分の関わること全体、社会全体を意識していくと変わっていくんじゃないのか、と思います。

—清水さんはいかがですか?

清水:学生は考えすぎちゃう人が多いな、と思います。行動した方が良い。何をやっても死なない。それに、他人に嫌われちゃうんじゃないかと思うかもしれませんが、意外とみんな他人に関心がない。死なないし、嫌われないし、大丈夫だから、それよりも自分のやりたいことを何でもやれよ、と思います。

—内向的な人が多いかもしれないですね。日本では特に、出る杭という文化もありますし。

渡辺: どんなに借金しても法律が守ってくれます(笑)

—最後に、何かお知らせしたいことがあればどうぞ!

渡辺: ちょうどあります(笑) 弊社ジオコードで、ディレクターが不足しています。

今発展している状態の会社なのですが、熱い気持ちをもって会社をでかくしてやるという人だったり、ディレクションという当たり前の業務をやる以外にそれを効率化させたい、というような熱意をもっている人を募集中です。できるディレクターさんがいらっしゃったら紹介してください(笑)

ディレクター応募 問合せ先 http://www.geo-code.net/sp/recruit/director/

清水:大学に行っているけど何を頑張れば良いかわからない、もっと頑張りたいという女の子がいれば、ぜひ一緒にサービスを作っていきたいです。

今後、日本で上場してアジアで展開していく予定です。在学期間中に、大きいことを経験したい、新しい物を見たい、という子がいれば、女の子でも男の子でも良いので、スキル問わないので、ぜひメール頂ければと思います。やる気があれば、誰でも。損はさせませんので。

02

清水さん メールアドレス maiko.shimiz@gmail.com

カテゴリー インタビュー記事 タグ .